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本日の1枚

プラチナの舌を持つMCと呼ばれるDabo(ダボ)のソロ・デビュー前夜

「共に行こう (version pure)」時のDabo(ダボ)
「共に行こう (version pure)」時のDabo(ダボ)

Dabo(ダボ)は、2000年前後に旋風を巻き起こしたN.M.U.(ニトロ・マイクロフォン・アンダーグラウンド)の中心メンバーのひとりである。いわゆる「さんピン」以降の世代が集結していたこのグループには、個性的なMCが集結していた。そのなかでも、Dabo(ダボ)は正統派のMCという認識がある。彼は、奇を衒(てら)うことなく、ラップのテクニックだけで勝負できる稀有なMCなのだ。

自分の間(ま)を持っていて、ビートにライム(韻)をハメるセンスが抜群にうまい。そのうえ、圧倒的な語彙力を備えている。言葉のボキャブラリーが豊富であるほど、イレギュラーな言葉を使って韻を踏むことができるものだ。さらにユーモアもある。ウィットに富んだ表現は、彼が柔軟な思考の持ち主であることを示している。

彼のキャリア初期の楽曲は、Shakkazombie(シャカゾンビ)の「共に行こう (version pure)」という曲。1997年にリリースされたシングル「共に行こう」のカップリングに収録されたリミックス・バージョンで、Gore-Tex(ゴア・テックス)、Suiken(スイケン)、Macka-Chin(マッカチン)とともに、マイクリレーで参加している。リミックス作品とはいえ、結成前のN.M.U.メンバーが多数参加した有名な曲である。(おそらく)この曲が、Dabo(ダボ)の音源としてリスナーが聴ける最初の楽曲だろう。

ここで聴くことができるDabo(ダボ)のラップには、現在とは違った初々しさが残っている。しかしながら、タイトなライミングと言葉選びに関しては、すでに完成されていると言っていいだろう。ところが、Dabo(ダボ)がソロでデビューするのは、まだ2年も先のこと。デビューが遅れたことについて、インタビューでこう話している。

(中略)でも、結局ソロ・デビューまでこれだけ時間がかかったのは、キャリアとかスキルとか以外の部分で心の準備が出来ていなかったのが大きいと思う。例えばこうやってインタビュー受けたりとか、ビジネス的なこととか、地方営業のこととか……。(blast誌 1999年12月号)

デビュー前に軽くスキルをお披露目

1999年、ソロ・デビューを間近に控えたDabo(ダボ)は、キエるマキュウのシングル「第三ノ忍者」にお邪魔して、その卓越したラップを披露した。CQ(シー・キュー)とMaki The Magic(マキ・ザ・マジック)によって、「第三の忍者現る!」とお膳立てされ、満を持して登場する。

ここまでお膳立てされてしまうと、ニセモノMCだったら、たまったものではない。しかし、大物ルーキーDabo(ダボ)は違っていた。パイセン(先輩)2人のラップを霞ませるほどのボキャブラリーとフロウでリスナーを圧倒したのである。

●第三ノ忍者 [Feat. Dabo] / キエるマキュウ
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=j6upVnORFJc[/youtube]

「第三の忍者 (1999年)」のDabo Verse(耳コピ)

Yo! 必殺仕置きMC Mr. Fudatzkee只今参上
お命頂戴 うなる手裏剣
仕事はタイト バット常にズルムケ
抜き足差し足千鳥足 Baby
お前の夢に珍入
まるで反町または岡村
とにかくタカシ系な1900飛んでナイナイ
ドープライン栽培
まるでナイタイ 下世話な広辞苑
MCども連れ去る高次元
宙を舞う地を這うフロー
鼓膜を襲う絶妙な匙加減 塩コショウ
超一流シェフかつ頑固オヤジ
聴衆調教完了 ボンボヤージ
玄人衆はとっくに重々認識
今しばらくさ待望の12インチ
ミステリアスまとった覆面小僧
スーパーナチュラルさえ復元不可能
奇々怪々 夢遊病マイクスタイル
感謝 第三の忍者の信者 yeah
俺はチョンマみたいにべろ出しトンズラ
糸目の端っころ引っかかったお前のアホ面
尻目にじゃじゃ馬 バックトラック
押し倒して Fuck I Do
やらねば しからば おさらば

シンプルなビートの上で、こんなにも自由にラップできるようになるには、一朝一夕では不可能だ。ラップが好きで、気が遠くなるほどのリリック(歌詞)を書いてこなければ、ここまでの完成度には到達できない。少なくとも「才能」の2文字だけでできるようなものではないのだ。

誰に強制されるでもなく、自分が勝手に「やりたい」と思ったことを、ひたすらやり続けた。その膨大な蓄積量が「第三の忍者」のリリックから汲みとることができる。もしも、「やりたくないこと」だったら、どうしても続けることは難しいし、生産性も下がってしまう。ここまでの蓄積量を身体に積むことはできないだろう。

好きなこと以外で、何かの道に秀でることは困難である。逆に、好きなことであれば、「努力」という自覚なしに成長し続けることができる。そのことを、この曲が教えてくれた。記憶に残る1曲であった。

収録アルバム

TRICK ART TRICK ART
(2000/11/30)
キエるマキュウ

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