映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(原題:The Big Short)を鑑賞した。サブプライム・ローンが焦げ付きはじめてからリーマン・ショックが起こるまでのアメリカが舞台。金融市場が崩壊するなんて誰も信じていなかった時代に「これは危ない!」と1歩先に気づいて、崩壊する方に投資したごくわずかな人たちの物語。
予告編
マイケル・ルイスの原作
2015年12月にアメリカ、2016年3月に日本で公開。監督は Adam McKay(アダム・マッケイ)。原作はMichael Lewis(マイケル・ルイス)『世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち』。
Michael Lewis(マイケル・ルイス)は過去に『ライアーズ・ポーカー (1989年)』や『マネー・ボール (2003年)』などのヒット作がある。『マネー・ボール』は2011年にBrad Pitt(ブラッド・ピット)主演で映画化もされた。ちなみにブラピは今作『マネー・ショート 華麗なる大逆転』にも出演している。
『マネー・ショート』は、わかりにくい映画?
銃でドンパチやるような派手なアクションは無い。見るからに悪そうな悪役もいない。不動産バブルという風船が膨らんで、みんなが盛り上がっている中、主人公たちは風船が弾けるのを辛抱して待つ、という話である。
映画評を見ると、「金融の専門用語がわかりにくかった」という意見があった。たしかに「CDS」「CDO」「リーマン・ショック」「サブプライム・ローン」あたりを理解してから観たほうが楽しめそうだ。
「CDS」については、以下の過去エントリーに軽くまとめてある。
映画の感想
私はこの映画を観て、「『タイタニック』といっしょだ」と思った。つまり、はじめから沈没することが「わかっている」パターンである。沈没するのが「船」か「経済」かの違いというだけだ。
すでに過去の歴史として結末を知っている私たちは、スクリーンを通して、当時の世界を疑似体験できる。このように当時の世界に飛び込んでいける映画は、わりと好きだ。
仮に自分が、主人公のように経済の沈没を予測できたらどうするだろう。どうにか生きのびようとして、様々な脱出方法を考えるだろうか。そしてひそかに「ノアの箱船」をつくって脱出を企てる。
ほかの人たちはまだ気づいていない。沈没するなんて話しても、信じてもらえないだろう。オオカミ少年がオチだ。信じてもらえない以上、彼らを説得してまで箱船に乗せる必要があるのだろうか。
信じている人だけが箱船を用意し、それに乗って脱出する。乗り遅れた人たちは、信じなかったから悪い。つまり自己責任で処理される。
これでは無慈悲だ。とくに弱者救済を是とする日本のシステムでは、乗り遅れても、なるべく救済してもらえるようになっている。そのことは悪くない。ただ、自分で考えられるのに、何もせず、救済をあてにしているのは感心できないと思う。
他人に行動をゆだねると、まちがいを他人のせいにできる。この「ぬるま湯」が、尊い「思考と決断」を奪っていく。
ウータンは「Protect Ya Neck(自分の首は自分で守れ!)」と言う。責任は自分で負うからこそ、自分の人生を生きることができるのだ。