事の発端はJay-Z(ジェイ・ジー)の逆恨み
Hip Hop史に名を残すほどのbeefとなったNas(ナス)とJay-Z(ジェイ・ジー)のバトル。おもに2001年から2002年にかけて繰り広げられたものだが、事の発端は意外にも1996年にまでさかのぼる。
2005年10月、突如2人の和解によってこのバトルは終結し、Nas(ナス)はそのままDef Jam(デフ・ジャム)に加入した。
そこで今回は、もっとも舌戦を繰り広げた2001年を時系列で追ってみよう。
- 2001年7月「Takeover」(Jay-Z)
- 2001年8月「Stillmatic Freestyle (H to the Omo)」(Nas)
- 2001年9月「Takeover (New verse)」(Jay-Z)
- 2001年9月「Ether」(Nas)
- 2001年12月「Supa Ugly」(Jay-Z)
- 2002年11月「Some People Hate」(Jay-Z)
- 2002年12月「Last Real Nigga Alive」(Nas)
シングル「Takeover」 – 2001年7月
Jay-Z(ジェイ・ジー)は、自身のファースト・アルバム「Reasonable Doubt (1996年)」に、Nas(ナス)の参加を望んでいた。ところが、Nas(ナス)はその依頼を拒否。
そのことを根に持っていたJay-Z(ジェイ・ジー)は、2001年6月に行なわれたHOT 97主催のイベント「Summer Jam」のステージで、突如「Takeover」を披露した。
このことで、明確にNas(ナス)を対象としたdissを大々的に発表することとなった。
●Takeover / Jay-Z
シングル「Stillmatic Freestyle (H to the Omo)」 – 2001年7月
一方、Nas(ナス)は「Takeover」に対抗して「Stillmatic」というフリースタイルを録音した。Eric B. & Rakim(エリックB・アンド・ラキム)の「Paid In Full」のビートに乗せて、淡々とRAPしている。
この曲には、Jay-Z(ジェイ・ジー)のシングル「I.Z.Z.O.」のサビを引っかけて、「H to the OMO(ホモ野郎)」というラインが話題を呼んだ。
ところが、この騒動が大ごとになるのを避けたかったNas(ナス)は、「Stillmatic」をアルバム未収録とした。(「Stillmatic」という曲自体は収録されているが、まったく別の曲である)
●Stillmatic Freestyle (H to the Omo) / Nas
アルバム「The Blueprint」 – 2001年9月
サンプリング主体で構成されたアルバム「The Blueprint」をリリース。Nas(ナス)が「Stillmatic」をアルバム未収録としたのに対して、Jay-Z(ジェイ・ジー)は新しい歌詞で「Takeover」を収録した。
アルバムに収録したことで、多くの人の耳に「Takeover」が届いたのは言うまでもない。
アルバム『The Blueprint』
アルバム「Stillmatic」 – 2001年12月
これに対抗したNas(ナス)は、アルバム「Stillmatic」のリリースに先がけて、Jay-Z(ジェイ・ジー)へのdiss曲「Ether」を発表。この曲をアルバムに収録した。
●Ether / Nas
アルバム『Stillmatic』
シングル「Supa Ugly」 – 2001年12月
すぐにJay-Z(ジェイ・ジー)はシングル「Supa Ugly」で反撃を開始。Nas(ナス)のアルバム「Stillmatic」収録シングル「Got Ur Self A…」と、Dr. Dre(ドクター・ドレ)「Bad Intentions」のトラックを使用してさらに過激なフリースタイルを披露した。
なかには、Nas(ナス)の娘の母親と関係を持ったことを匂わせるような表現が含まれており、Hip Hopのbeefとしては適切でなかったとし、Jay-Z(ジェイ・ジー)自らこの曲をお蔵入りとした。
●Supa Ugly / Jay-Z
その後、beefは沈静化。と思いきや…
ラジオ番組「HOT97」では、JAY-Z「Supa Ugly」とNas「Ether」の、どちらが優れているかを視聴者に投票させた。結果は「52対48」でNasが勝利を収めた。
その後、お互い終戦を匂わすも、それぞれ次のアルバムにお互いへのdiss曲を収録していた。
●Some People Hate / Jay-Z(収録アルバム「The Blueprint 2」)
アルバム『The Blueprint2: The Gift & The Curse』
●Last Real Nigga Alive / Nas
アルバム『God’s Son』
いがみ合っていた両者であったが、2005年10月にステージ上で2人は和解し、このbeefは終結した。