東海岸を再びブレイクさせる
西海岸は、Dr. Dre(ドクター・ドレ)が1992年ごろから爆発的にG-FUNK(ジー・ファンク)を流行らせていた。Snoop Doggy Dogg(スヌープ・ドギー・ドッグ)というスター・ラッパーとともに、全米で派手なG-FUNK旋風が巻き起こると、相対的に地味な東海岸(ニューヨーク)サウンドはその勢いを失いつつあったという。
そこで当時10代だったNasty Nas(ナスティ・ナズ)という、めっぽうRAPがうまいとウワサの若造を担いで、東海岸の栄光を再び取り戻そうと考えた。いちどは大手Def Jam(デフ・ジャム)の創始者Russell Simmons(ラッセル・シモンズ)にRAPのデモを聴いてもらったが、「Kool G Rap(クールGラップ)のフロウに似てる。だったらKool G Rap(クールGラップ)で間に合ってるよ」と一蹴。
しかし、その後、とんでもないアルバムが誕生することになる。DJ Premier(DJプレミア)、Pete Rock(ピート・ロック)、Q-Tip(キュー・ティップ)、そしてLarge Professor(ラージ・プロフェッサー)などがトラックを持ち寄った。お互いがほかの楽曲を耳にすると、「アイツすげえトラック持ってきやがった。俺ももっとすげえトラックに作り直さねえと!」という相乗効果でベスト・トラックが集結した。そのアルバムが「Illmatic」なのだ。
●The World Is Yours / Nas
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=mZSYVtdS9_Y[/youtube]
この曲はPete Rock(ピート・ロック)によるトラック。タイトル「The World Is Yours」は教典的ギャング映画「スカーフェイス」のワンシーンに出てくるメッセージ。PVに見られるジャグジーのシーンも、この映画のオマージュだと考えられる。
ストリートでハスリングしている(路上で麻薬取引をしている)ハスラーにとって、「スカーフェイス」の主人公トニー・モンタナは神のような存在。その役を演じたアル・パチーノもまた彼らに崇拝されている。Nas(ナス)本人もアル・パチーノと会ったときは、緊張しすぎて声が出なかったという話もあるらしい。
「The World Is Yours」で使用されている曲
- I Love Music / Ahamd Jamal
- It’s Yours / T La Rock