カテゴリー
仮説

FLA$HBACKSからデジタルネイティブのアウトプットを考える

Fla$hBackS (左からKID FRESINO、jjj、Febb)
Fla$hBackS (左からKID FRESINO、jjj、Febb)

FLA$HBACKSの概要

FLA$HBACKS(フラッシュバックス)は、jjj(ジェー・ジェー・ジェー)、Febb As Young Mason(フェブ・アズ・ヤング・メイソン)、Kid Fresino(キッド・フレシノ)からなる3人組ユニット。全員トラックがつくれてラップもできるというボーダレスなポジショニングが新世代を感じさせる。

FLA$HBACKS / FLA$HBACKS

jjj(ジェー・ジェー・ジェー)がプロデュースするレイドバックしたトラックに、jjj(ジェー・ジェー・ジェー)とFebb(フェブ)がラップを乗せている。どうでもいいが、ミュージックビデオのjjjを見てなぜか井上三太のマンガを思い出した。

リリックの意味は特に重視していないようにも見える。それがトラックとラップの融合に一役買っているようだ。意味がないぶんラップも込みで「音」として耳に入ってくるから心地よい。歌詞を掲載しないのもそれを狙ったものだろうか。

この曲が収録されたデビュー・アルバム「FL$8KS」は2013年2月にリリースされている。

ラップの経験が1年にも満たなかったKid Fresino(キッド・フレシノ)がメンバーに先駆けてソロ・アルバムでデビューしたというのも面白い。

Champion / Kid Fresino

Kid Fresino(キッド・フレシノ)に続き、Febb(フェブ)も2014年1月29日にファースト・ソロアルバムをリリース。

Febb(フェブ)は10代の頃から、Tetrad The Gang Of Four(テトラド・ザ・ギャング・オブ・フォー)のSperb(スパーブ)らとともにCracks Brothers(クラックス・ブラザーズ)というユニットで活動していた。

こういった実績から考えると、Febb(フェブ)のほうが先にソロ・デビューしても良かったぐらいだ。

jjj(ジェー・ジェー・ジェー)も2014年6月にアルバムをリリース予定。

彼らの今後の活躍を期待しよう。

雑感

カセットテープやCDで音楽を聴いていた頃は、1曲目から順番に聴くことを余儀なくされていた。アルバム作品は曲順を練って最初から最後までの流れを重視する。アルバム全体を通してひとつの作品という考え方だ。

しかしデジタル化された音楽ファイルはどこからでも聴くことができる。曲単位で好きなものをピックアップし、自分好みのプレイリストをつくれる。発売年、アーティスト、アルバムはバラバラでかまわない。

つまりアルバムを曲順通りに全部聴かなくてもいいのだ。むしろ好きな1曲だけを聴けばいい。聴く時間は10分の1ぐらいで済む。アルバム1枚聴いている間に10曲以上もまったく別の曲を聴くことができる。

多種多様なジャンルの音楽から、重要な曲、有名な曲だけを厳選する。なんと効率的なインプットだろう。こんな音楽の聴き方が現代ではできる。昔はCDを取り替えたり、好きな曲を集めたかったらダビングしなければならなかった。(そういえば、「ダビング」とか「巻き戻し」も若い人には通じない死語になったらしい)

どんな楽曲の作り手も、過去に聴いてきた(見てきた)ものを自分なりの解釈を加えて作曲している。というか、自分が体験してきたバックグラウンドというのは、どうしてもにじみ出てしまうものだ。すべての情報(音楽)から好きなものを選択する自由があるのなら、楽曲が多様化するのは必然だ。

外部の情報が自分のフィルターを通ってインプットされ、自分の解釈によってまた外部へとアウトプットされる。当たり前のことだ。

アルバム単位、またはジャンルや時代など、もっと大きなカテゴリ単位で音楽を聴いてきた世代のインプットと、楽曲単位で自分のフィーリングに合ったものをバラバラに聴くデジタル・ネイティブ世代のインプットとでは、アウトプットの質が異なるのも当然である。(一長一短ではあるが)

キメラのようにいくつかの異なる細胞を共存させたような楽曲は、どこかに影響を受けているようでも特定は不可能。全時代、全世界の音楽を自分の心のままにインプットした上でカスタマイズされたアウトプットは、人の数だけ存在する。

合法かどうかは別にして、YouTubeやファイル共有ソフトによってほぼコストなしで音楽を聴ける環境だったのは大きい。また、作曲する機材の利便性や、人脈を得るためのSNSなど、必要なものを最小限の労力で手に入れるデジタル・ツールにあふれている。

好きな音楽をやりたいだけやり続けてしっかり形にさえできれば、音源をバラまくのは難しいことではない。無料でインターネットを利用できる時代に必要なのは、コンテンツとブランディングを構築する行動力なのだろう。