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ヒストリー

ニュー・ジャック・スウィングの入口

重厚に歌い上げるR&Bと、ビートとラップからなるヒップホップ音楽。この2つのジャンルの良いところをミックスたハイブリッド音楽は「New Jack Swing(ニュー・ジャック・スウィング)」と呼ばれ、1987年から1989年にかけて大ヒットした。

ニュー・ジャック・スウィングの生みの親は、Teddy Riley(テディー・ライリー)というプロデューサーである。彼がつくった一連の楽曲は多くのアーティストに影響を与えた。

一時はニュー・ジャック・スウィングが完全にR&Bの主流だった時代もあったほどである。

How Ya Like Me Now / Kool Moe Dee (1987年)

Now That We Found Love [Feat. Aaron Hall] / Heavy D & The Boyz (1991年)

Teddy Riley(テディー・ライリー)は、Kool Moe Dee(クール・モー・ディー)やHeavy D(ヘヴィ・ディー)などといった、ヒップホップMCの楽曲をプロデュースしていたが、このテイストをR&Bにも応用することで成功を収めた。

R&Bといえば本格的な歌唱力で歌い上げるイメージがある。しかしニュー・ジャック・スウィングが登場することによって、歌モノでも踊れることを実証したのである。

転機となったキース・スウェットの「I Want Her」

Keith Sweat(キース・スウェット)が1987年にリリースしたファースト・アルバム「Make It Last Forever」は、Teddy Riley(テディー・ライリー)が大半の曲をプロデュースしている。ニュー・ジャック・スウィングの入門作品としてはかなり最適なアルバムだろう。

大ヒットしたデビュー・シングルの「I Want Her」は、Teddy Riley(テディー・ライリー)にとっても転機となった曲なのは間違いない。

I Want Her / Keith Sweat (1987年)

ニュー・ジャック・スウィングを象徴する曲「My Prerogative」

Bobby Brown(ボビー・ブラウン)の「My Prerogative」という曲は、ブリブリのキーボード・ベースラインが印象的な男気チューン(タイトルを直訳すると「オレ様の特権」)。ニュー・ジャック・スウィングを象徴するサウンドといっていいだろう。

Bobby Brown / My Prerogative (1988年)

Britney Spears(ブリトニー・スピアーズ)は、2004年のベスト・アルバム「Greatest Hits: My Prerogative」に新曲となる「My Prerogative」のカヴァーを収録した。アルバム・タイトルにするほどの力の入れようで、かなりの完成度を誇っている。

My Prerogative / Britney Spears (2004年)

ジョニー・ケンプの「Just Got Paid」

Johnny Kemp(ジョニー・ケンプ)もまた、「Just Got Paid」というダンサブルなナンバーをリリースしている。

Just Got Paid / Johnny Kemp (1988年)

Justin Timberlake(ジャスティン・ティンバーレイク)も所属していたアメリカのポップ・グループ、NSYNC(インシンク)がこの曲をカヴァー。2000年発売のアルバム「No Strings Attached」に収録されている。

Just Got Paid / NSYNC (2000年)

とうとうマイケルも採用したNew Jack Swing

1987年から1989年にかけてNew Jack Swing(ニュー・ジャック・スウィング)旋風を巻き起こしたTeddy Riley(テディー・ライリー)は、キング・オブ・ポップことMichael Jackson(マイケル・ジャクソン)から、1991年リリースのアルバム「Dangerous」の楽曲プロデュースのオファーもらった。

すでに成熟していたニュー・ジャック・スウィングであったが、マイケルが採用したことによって、ポップスとしての「お墨付き」を得ることとなった。

Jam / Michael Jackson

テディ・ライリー自身もグループを結成

Teddy Riley(テディー・ライリー)は、1987年にGuy(ガイ)というグループを結成し、1988年に「Guy」、1990年に「The Future」というアルバムを出している。

‘Round And ‘Round (Merry Go ‘ Round Of Love) / Guy (1987年)

ほかのアーティストたちのプロデュース業をしながらも、自身のグループGuy(ガイ)の作品のプロデュースもぬかりなくこなした。ところがメンバーの Aaron Hall(アーロン・ホール)とモメて解散となる。(再結成後の2000年にサード・アルバム「III」をリリース)

1991年には新グループとなるBlackstreet(ブラックストリート)を結成。1994年リリースのファースト・アルバム「Blackstreet」は名曲ばかりが収録された名盤となった。

Joy / Blackstreet (1995年)

まとめ

New Jack Swing(ニュー・ジャック・スウィング)という「踊れる歌モノ」を開発したTeddy Riley(テディー・ライリー)は、多くのアーティストに影響を与えた。日本でも1990年ぐらいから、New Jack Swing(ニュー・ジャック・スウィング)を意識した曲が登場し、そのエッセンスは現在でも散見される。

歌、ダンス、ラップなどをうまくミックスした、聴いているだけで体が動いてしまうような音楽。New Jack Swing(ニュー・ジャック・スウィング)に限ったことではないが、これがきっかけでダンスミュージックの扉がひとつ開いたのは間違いない。

ニュー・ジャック・スウィングの入口として最適なアルバム

収録曲『New Jack Swing: Gold』(2008年)

Disc 1
  1. I Want Her (Extended Version) / Keith Sweat
  2. Just Got Paid (Dub Version) / Johnny Kemp
  3. Groove Me / Guy
  4. My Prerogative (Remix) / Bobby Brown
  5. Him or Me (12″ Remix) / Today
  6. Real Love / El DeBarge
  7. I Like (Hype Version) / Guy
  8. As Long As We’re Together (Remix Edit) / Al Green, Al B. Sure!
  9. New Jack Swing (12″ Remix) / Wreckx-N-Effect
  10. Somebody for Me / Heavy D & the Boyz
  11. I Found Lovin’ (Club Version) / Jeff Redd
  12. Spread My Wings / Troop
  13. Poison / Bell Biv DeVoe
  14. Rub You the Right Way (7″ Version) / Johnny Gill
Disc 2
  1. Why You Get Funky on Me (12″ Mix) / Today
  2. Hold On (edit With intro) / En Vogue
  3. Feels Good / Tony! Toni! Toné!
  4. She’s Mine (Radio Club Mix) / Basic Black
  5. Treat Them Like They Want to Be Treated (Club Mix) / Father MC
  6. Sensitivity (Radio Mix) / Ralph Tresvant
  7. I Like the Way (The Kissing Game) / Hi-Five
  8. Motownphilly / Boyz II Men
  9. I Wanna Sex You Up (Smoothed Out/Long Version) / Color Me Badd
  10. You Called and Told Me / Jeff Redd
  11. Come and Talk to Me / Jodeci
  12. Rump Shaker (Teddy 2) / Wreckx-N-Effect
  13. I’m in Luv (Remix Edit) / Joe
  14. Anything (Old Skool Mix) / SWV