カリフォルニア州ロサンゼルス、コンプトン地区で結成されたヒップホップ・グループ、N.W.A.(エヌ・ダブリュー・エー)の伝記映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』を観た。
話自体は、ヒップホップ・グループ「N.W.A.(エヌ・ダブリュー・エー)」の結成、金銭問題でメンバーが脱退、問題解決後に再結成、という構成。
主要メンバーであるEazy-E(イージー・イー)、Dr. Dre(ドクター・ドレ)、Ice Cube(アイス・キューブ)の人間模様がていねいに描かれていて、N.W.A.(エヌ・ダブリュー・エー)を知らなくても映画を観れば概要をつかめる内容となっている。
N.W.A.(エヌ・ダブリュー・エー)といえば治安の悪いコンプトン地区を象徴するグループ。反社会的で過激なリリックは若い不良たちから絶大な支持を得ている一方で、保守的なメディアや警察に非難され、CIAにも目をつけられてしまう。
とくに、警察による不当な黒人差別への怒りを爆発させた「Fuck Tha Police」は、タイトルからしてすでに直接的で、内容も過激だった。
Fuck Tha Police / N.W.A.
収録アルバム
明暗を分けたN.W.A.のその後
反社会的なスタンスで活動するグループは、あまり長続きしないところがある。それはN.W.A.(エヌ・ダブリュー・エー)も例外ではない。お決まりの金銭トラブルでグループに亀裂が走る。
Ice Cube(アイス・キューブ)は、大半の曲を作詞したはずなのに報酬が少な過ぎると抗議したが、受け入れてもらえず脱退。続いてDr. Dre(ドクター・ドレ)も不正な契約に不信感を抱いて脱退してしまう。
メインで作詞と作曲を担当していた2人が抜けたN.W.A.(エヌ・ダブリュー・エー)は、衰退の一途をたどる。もともと才能のあったIce Cube(アイス・キューブ)とDr. Dre(ドクター・ドレ)は脱退後もそれぞれ成功をおさめるが、Eazy-E(イージー・イー)はグループの衰退に焦燥感をつのらせ、おまけに体調も崩してしまった。
分業は信頼関係のうえで成り立つ
N.W.A.(エヌ・ダブリュー・エー)が分裂してしまった敗因は、中核をなすメンバーを冷遇してしまったことだ。もっとも生産性の高い2人に相応の報酬を与えていれば、もっとグループを長く維持できたにちがいない。
音楽とマネジメント。これらは別の仕事だが、グループを発展させるためには両方とも必要不可欠なものだ。魅力的な楽曲をつくる能力と契約書の内容を把握する知識。これらをかね備えた人ならいいが、そうでないのなら、信頼できるチームを組んで分業するしかない。このときに重要なのは、やはりメンバー間の信頼関係と結束力である。
どんな仕事でも、分業であれば信頼関係は強固にしておきたい。そう思える映画だった。
まとめ
本作の見どころは、N.W.A.(エヌ・ダブリュー・エー)の中核を担うメンバーたちの人間模様、そして迫力のライブシーンである。役者たちの再現性も高く、満足できる映画だった。
Ice Cube(アイス・キューブ)役は本人の息子というのも話題になっていたが、個人的にはDeath Row(デス・ロウ)レコードのSuge Knight(シュグ・ナイト)、Snoop Dogg(スヌープ・ドッグ)、そして2Pac(トゥパック)まで登場したのが嬉しかった。
とくにSnoop Dogg(スヌープ・ドッグ)が「Nuthin’ But A “G” Thang」にラップをのせ始めたシーンは鳥肌が立った。
Nuthin’ But A G Thang [Feat. Snoop Dogg] / Dr. Dre
収録アルバム
Dr. Dre(ドクター・ドレ)は、このDeath Low(デス・ロウ)レコードもSuge Knight(シュグ・ナイト)に明け渡して、さらに次のステージへと駒を進める。
彼のように、やりたい仕事をひたむきにやれる人間を、才能のある人間と呼ぶのだろう。成功者のマインドは、カネよりも仕事の環境整備を優先するのだと思った。
Dr. Dre(ドクター・ドレ)に関しては、「Dr. Dre(ドクター・ドレ)の歴史をたどるだけで、かなりヒップホップの理解が深まる」という記事にその歩みを要約している。映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』を見る前の予習として目を通しておくとより楽しめると思う。