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書評

エド・ピスコーの漫画「ヒップホップ家系図」の続編を読んだ

ヒップホップ家系図 Vol.2

ヒップホップ創世記の物語を描いた、エド・ピスコーの漫画「ヒップホップ家系図」の続編を読んだ。今回は2作目で、1981年〜1983年の3年間に起きた物語描かれている。

おもに取り上げられていたエピソードは、チャーリー・エーハンによるヒップホップ映画『ワイルド・スタイル』の撮影風景、当時のヒップホップを牽引していたシュガーヒル・レコードの立ち回り、アフリカ・バンバータの『プラネット・ロック』の誕生、Run-DMC(ラン・DMC)の初期活動などだ。

また、西海岸(おもにカリフォルニア州)のヒップホップにも触れている。アイスT、アンドレ・ヤング(ドクター・ドレ)、チャックDなどが登場していた。

「生演奏」から「打ち込み」へ

既成のレコードなど無断で流して、その上にラップをかぶせると、著作権の問題もあるため、販売したときに怒られてしまう。そこで、別のバンドによって、同じような生演奏を再収録して、その演奏の上にラップをかぶせるのが、これまでの主流だった。(『ヒップホップ家系図 Vol.1』に出てくる、シュガーヒル・レコードの製作方法もこれ)

やがて、『ヒップホップ家系図 Vol.2』に描かれている1980年代に入ると、バンド生演奏での録音から、TR−808などのドラムマシンを使ってリズムをつくるアーティストが出てくる。

先述したアフリカ・バンバータの『プラネット・ロック』は、ドラム打ち込みとサンプリングによって生まれた曲である。ドイツの電子音楽グループ、Kraftwerk(クラフトワーク)の「Numbers」「Trans-Europe Express」をサンプリングして、おおよそ従来のヒップホップとは異なるテイストの作品となり、話題となった。

Planet Rock / Afrika Bambaataa & The Soul Sonic Force (1982)

ランDMCもまた、ドラムマシンをつかって曲をつくった。彼らのすごいところは、トラックを極限までシンプルにするために、メロディアスなフレーズを排除して、ドラムの打ち込みのみで曲をつくったところだ。彼らは、「ラップは、声と歌詞を売るべきだ」と訴え、ハードなライムをぶつけた攻撃的なリリックの「Sucker M.C.’s」を生み出し、これが話題となり、瞬く間に頭角を現してきたのだ。

Sucker M.C.’s (Krush-Groove 1)

彼らは、この「Sucker M.C.’s」と「It’s Like That」という、たった2曲の持ち曲だけで、多くの次世代MCたちに影響を与えたのである。

まとめ

この『ヒップホップ家系図』シリーズは、まだ続きそうなので、今後も読み進めていきたい。1990年代からヒップホップの世界を知った「新参者」にとって、このように、わかりやすいマンガで歴史を辿れるのはうれしい。

さすがに手間のかかる作品なので、次作を手に取れるのはまだ先かもしれない。でもそのときは、またここで紹介させていただきたい。

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