1995年に、アメリカから「逆輸入」されたBuddha Brand(ブッダ・ブランド)は、シングル「Funky Methodist」、「人間発電所」と、矢継ぎ早にリリース。日本のヒップホップの新たな可能性を提示した。
丁寧にサンプリングされた楽曲は、どれも完成度が高い。しかし、ラップの内容は、正直ぶっ飛びすぎていて理解に苦しむ。Nipps(ニップス)の「illなflavorの特殊mad病んでる」というデタラメな文法を見れば、並のラップではないことがわかるはずだ。(引用した箇所が恣意的なのは、ひとまず置いておく)
ともかく、Dev Large(デヴ・ラージ)による完成度の高いヒップホップ・トラックに、「イル」なラップを乗せたBuddha Brand(ブッダ・ブランド)の作品は、日本のコアなヘッズの心をがっちりとロックしたのであった。
そんなある日、ハードコア・ヒップホップのアイコンとして認知され始めていたBuddha Brand(ブッダ・ブランド)が、まさかのメロウ路線の楽曲を発表した。タイトルは「ブッダの休日」。
●ブッダの休日 / Buddha Brand
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=6nrLWE-TKfo[/youtube]
ガンガン上を目指して進むのもいいけど、たまには一服しようか。そんなメッセージが込められたこの作品は、Dev Large(デヴ・ラージ)が、「こっちの(メロウな)路線もできるんだぜ!」と、自身の「幅の広さ」を主張する作品になっている。
この曲が生まれる背景には、Dev Large(デヴ・ラージ)が、「日本のヒップホップを一般に広めるためには、こういった一般人の耳にも馴染む、やさしい作品も必要なんだ」とつくっていかないとダメだと感じたからだという。
当然、ハーコー(hard core)な作品を期待していたファンから、「所詮、ブッダも売れセン狙いかよ!」と、反感を浴びるリスクも承知していたようだ。それを想定した上で、日本のヒップホップ全体の未来を危惧してアクションを起こしたDev Large(デヴ・ラージ)の行動力を賞賛したい。
「ブッダの休日」の元ネタ
大きく2つのレコードが使用されている。
●Coco / Joe Thomas
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=1OO8wFRPWDQ[/youtube]
この曲の根幹を形成する元ネタ。ヒップホップ作品にしては、BPMが遅すぎるため、ピッチは上がっている。
●Alone In Brewster Bay / Minnie Riperton
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=pOUOBSYwbUI[/youtube]
冒頭の「小鳥のさえずり」が収録されている元ネタ。
出来上がってしまえば、そのまま聴くことが出来るヒップホップ・トラック。複数のネタを組み合わせて、ひとつの楽曲をつくるには、非凡なアイデアが必要である。「ブッダの休日」は、まさしくその「格」を見せつけた作品だろう。