2014年3月19日、K Dub Shine(ケーダブ・シャイン)と、Rhymester(ライムスター)の宇多丸(ウタマル)によるシングル「物騒な発想(まだ斬る!!)」がリリースされた。
この2人には「社会派ラッパー」というイメージがある。その背景には、スペースシャワーTVの音楽番組内のトークコーナー「第三会議室」での共演が関係している。時事ネタを扱い、お互いの政治的見解をぶつけながら、ゆるく議論を重ねて来た経緯が「社会派」というイメージをつくったのだろう。
そんな2人が一緒に曲をつくれば、社会派な楽曲に仕上がるのは容易に想像がつく。今回もやはり政治的な思想が見え隠れする1曲に仕上がっている。
楽曲のプロデュースは、Jhett a.k.a. Yakko(ジェット・エーケーエー・ヤッコ)が担当。フックは、Deli(デリ)がラップしている。要は、Aqarius(アクエリアス)がこの曲に参加しているというわけだ。
リンク:シングル「物騒な発想(まだ斬る!!)」をiTunes Storeでダウンロードする
まだまだまだ!斬る斬る斬る!
冒頭からDeli(デリ)のシャウト。いわゆる「Murder Murder Murder, Kill Kill Kill」をもじったダブル・ミーニング。これから斬っていくから覚悟しとけ!的な感じである。
そこからK Dub Shine(ケーダブ・シャイン)と、Rhymester(ライムスター)の宇多丸(ウタマル)が斬りかかっていく。資本主義社会や、既成の政治システムへの疑問をライムでぶつけている。同時に、社会のことを何も考えずに生活している大人たちに対してもケツを叩いているように聞こえた。
K Dub Shine(ケーダブ・シャイン)と宇多丸(ウタマル)による過去の共演
あまりに過激なテーマに触れてしまうと発売できない「政治的な事情」があるのかもしれないが、過去にリリースした「キ・キ・チ・ガ・イ」は、タブーにかなり斬り込んだ作品だった。
キ・キ・チ・ガ・イ [Feat. 宇多丸 & K Dub Shine] / DJ Oasis
さすがに今後もCD化されることはないだろうが、このような曲がアナログとはいえ2001年にリリースされたのはすごい。はじめに宇多丸(ウタマル)が「言葉の隠し絵」と言っているように、どんなふうに聞こえてもすべて聞き違いという設定だ。
もともと「キ・キ・チ・ガ・イ」は、DJ Oasis(DJオアシス)名義の作品。そのため、彼のアルバム『東京砂漠』に収録されるはずだったと思われる。
しかし、この曲はアルバム未収録となり、代わりに「社会の窓 (キ・キ・チ・ガ・イ Part 2) [Feat. 宇多丸]」が収録された。
社会の窓 (キ・キ・チ・ガ・イ Part 2) [Feat. 宇多丸]
こちらは、パート1に比べると、ややコミカルなテイストになっているが、テーマは同じ。ミュージック・ビデオでの宇多丸のコスプレがおもしろい。
ちなみに、この曲にK Dub Shine(ケーダブ・シャイン)の姿はない。
K Dub Shine(ケーダブ・シャイン)と宇多丸(ウタマル)が「キ・キ・チ・ガ・イ」(2001年)のあとに共演したのは、そのずっと後だ。2008年に発表した「大人の責任」という曲である。
大人の責任 [Feat. Crazy Ken, 宇多丸 & K Dub Shine] / Mr.Beats (DJ Celory) (2008年)
クレイジーケンバンドの横山剣(ヨコヤマ・ケン)とともに、K Dub Shine(ケーダブ・シャイン)と宇多丸(ウタマル)が「大人の責任」についてラップしている。
この曲は、Soul Scream(ソウル・スクリーム)のDJ Celory(DJセロリ)のアルバムに収録されている。
「キ・キ・チ・ガ・イ」シリーズ最新作
DJ Oasis(DJオアシス)もまた、「マイク持つDJ」として社会派ラッパーとして認識されている。先述の「キ・キ・チ・ガ・イ」、「社会の窓」に続いて、「キ・キ・チ・ガ・イ」シリーズ3作目となる「世界一おとなしい納税者(カモ)」を2004年に発表している。
世界一おとなしい納税者(カモ)(Remix) [Feat. 宇多丸] / DJ Oasis (2004年)
国から税金を搾取されてもヘラヘラしてる人を皮肉ったような内容に聞こえる。「無知は罪」という言葉があるが、損したくなければ自分で知識を獲得しなければならない。現状に満足している人間にとっては、どうでもいい話だろう。
まとめ
というわけで、「物騒な発想(まだ斬る!!)」がiTunes Storeで配信開始したタイミングで、DJ Oasis(DJオアシス)を巻き込みながら、K Dub Shine(ケーダブ・シャイン)と宇多丸(ウタマル)の共演曲をいくつか紹介した。
K Dub Shine(ケーダブ・シャイン)と宇多丸(ウタマル)の共演曲は意外と少ないが、過去の共演曲を追っていけばテーマが一貫しているのを感じる。なんなら、DJ Oasis(DJオアシス)も入れて3人でコンセプト・アルバムをリリースしてほしいくらいだ。
キングギドラとライムスター。メンバーを入れ替えて、別ユニットでやるのも面白い。
Mummy-D(マミーD)とZeebra(ジブラ)も、「末期症状」「アイスピック」「流儀」「Mastermind」なんかで共演している。
とりあえず今は、現在制作中というK Dub Shine(ケーダブ・シャイン)の新アルバムが出るのを、「物騒な発想(まだ斬る!!)」を聴きながら待つことにしよう。