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書評

日本で活動するラッパーのルーツや作詞法を学べる1冊

日本のラッパー15人によるインタビューが収録された『ラップのことば2』には、自己表現のツールとして「日本語ラップ」を採用しているアーティストのルーツや作詞法などが紹介されている。

収録アーティスト

  • KREVA
  • SALU
  • ポチョムキン (餓鬼レンジャー)
  • 泉まくら
  • AKLO
  • MACCHO (OZROSAURUS)
  • SKY-HI
  • ROY
  • OMSB (SIMI LAB)
  • daoko
  • VERBAL (m-flo)
  • NORIKIYO
  • GAKU-MC
  • SHINGO★西成
  • KEN THE 390

作詞法に正解はない

作詞法はアーティストによって大きく異なる。紙のノートに手書きで歌詞の断片を書きなぐる人もいれば、パソコンに打ち込んでいく人もいる。自宅で作業する人もいれば、スタジオでしかやらない人もいる。

ただ、うまいフレーズを思いついてiPhoneなどにメモっても、だいたい使えない(からやめた)という意見が多かった。また、時間をかけて熟考するよりも、サクサク書けたものの方が結果的に満足度の高い作品になることが多いという。このあたりは多くのラッパーが紡いだ真理なのだろう。

ほかにも、アーティストの考えで個人的に印象に残ったところをリストにしてみたので、ご覧いただきたい。

印象に残ったところリスト

  • テーマとフックになる韻を大事にしている。(KREVA)
  • わかりやすく伝えることを重視している。(SALU)
  • 説明しすぎないようにする。(ポチョムキン)
  • メッセージやテーマではなく、見えているもの(風景など)を書く。(泉まくら)
  • リリックにパーソナルな部分(アーティストの素顔)を見せない。(AKLO)
  • 作品は人生そのもの。自分主体で歌詞を書く。(MACCHO)
  • 自分の思想さえ固まっていれば、どんなオーダーでもリリックが出てくる。(SKY-HI)
  • 日本語は文字数をそぎ落としていくほど洗練される。そういう面ではラップとの食い合わせがあまり良くない。(環ROY)
  • リリックに未実現の背伸びした状態を書いて、近い将来に実現させる。(OMSB)
  • 自分から情報を得ない。生活の中で自然に入ってきたモノが自分の言葉になる。(daoko)
  • いい作品をつくったなら気づかれたい。(VERBAL)
  • リリックは野球でいう素振りみたいなものなので毎日書く(ラップ筋トレ)。(NORIKIYO)
  • アルバムにこだわる(コース料理メソッド)。(NORIKIYO)
  • ヒップホップは等身大の自分を表現するもの。(GAKU-MC)
  • ラップで世界をプラスの方向にしたい(ラップラス)。(GAKU-MC)
  • 炊き出しで会ったおっちゃんらにラップを伝えるには、あんまり余計な言葉はいらない。(SHINGO★西成)
  • ラップで「いいこと」を言ってもしょうがない。その人が出せる面白い表現をしたほうがいい。(KEN THE 390)

感想

ラッパーとして成功するためのお手本など存在しない。インタビューに応じた15人のアーティストがそれぞれの作詞術やラップ論にたどり着いたのは、膨大なリリックを書き続けた結果である。

どんな仕事であっても、蓄積された行動の先に自分の「生きざま」が描かれる。重要なのは、自分自身がその「生きざま」に納得できるかどうかだ。

だれもが、納得できる「生きざま」を自分自身の行動でデザインできる。ラップを仕事にするというのはかなり特殊な気もするが、特殊だからこそ、彼らは自分の力で「生きざま」をデザインしているのだと感じた。

参考書籍

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