レコードプレーヤーとターンテーブル
ヒップホップの世界では、レコードプレーヤーのことを、「ターンテーブル」という。ただし、レコードプレーヤーと、ターンテーブルの違いを説明できる人は、あまりいない。
ターンテーブルというのは、本来、レコードプレーヤーの「ある部分」を指す名前である。ある部分というのは、レコードプレーヤーの、レコードを乗せて回転する「丸い台」のこと。
レコードを回して、音楽を再生するオーディオのことを「レコードプレーヤー」と呼び、回転する丸い台の部分を「ターンテーブル」と呼ぶ。これが、本来の呼び名であった。
ヒップホップの世界において、レコードプレーヤーのことを「ターンテーブル」と呼ぶ理由。そこには、「DJ」という仕事が大いに関係している。
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DJは、客(リスナー)に向けて音楽をかけるのが仕事である。バトルDJ、ラジオDJ、ライブDJ、クラブDJなど、DJする場所によって、目的は多少なりとも変わってくるが、本質は同じ。
たとえば、クラブDJは、クラブで曲をかけて、お客さんを踊らせるのが目的である。ダンスに興じるには、曲をつなげて、一定のビートを刻み続けなければならない。
曲と曲のあいだに「無音」の時間があると、お客さんは白けてしまう。だから、クラブDJは、矢継ぎ早にレコードをかけ続ける。いつまでも、音に身を任せて踊れるように。
ターンテーブルの上に乗っているレコードは、次々と入れ替わる。ときには、数秒で取り換えることもある。とにかく、流れを止めてはいけない。
リズムを一定に保つために、ターンテーブルの回転スピードを調節したり、スクラッチをして、アクセントをつける。ターンテーブルの上は、ステージの舞台裏のようにあわただしい。
そして、DJがとる行動のひとつひとつは、レコードプレーヤーの寿命を縮めるものばかり。DJは、「レコードプレーヤーの取扱説明書で禁止されているようなこと」ばかりを行なっているのだ。
DJプレイは、ターンテーブルが主戦場
本来、レコードプレーヤーで音楽を聴く場合は、レコードに針を置いたら、曲が終わるまで何もしなくていい。ところが、DJは違う。曲の再生中に、いろいろとやる。
レコードを指で押さえたり、ターンテーブルを逆に回してみたり、スクラッチしたりとやりたい放題だ。さすがにターンテーブルも、逆に回されるとは思ってもいなかっただろう。
このような理由から、DJが使うレコードプレーヤーには、「DJプレイに耐えられるほどの、頑丈なターンテーブル」が欠かせなくなった。
ふつうに音楽を聴くだけでは、絶対に必要のない「耐久性」が求められたのだ。
さらに、DJの人口が増えると、需要も増加。DJプレイを想定した「”頑丈なターンテーブル付きの”レコードプレーヤー」は、独自の進化を歩むこととなる。
これはもう、レコードプレーヤーという機能を超えた、「ターンテーブル」というジャンルの機器と呼べるものだ。
「一般視聴用」と「DJプレイ用」では、ターンテーブルの耐久性が大きく異なる。
ここからは推測の域を出ないが、目的の異なるレコードプレーヤーを差別化するために、DJプレイ用のものを「ターンテーブル」と呼んだのではないだろうか。
個人的には、そういう認識で「レコードプレーヤー」と「ターンテーブル」を使い分けている。ヒップホップには、やはり「ターンテーブル」が必要なのである。
関連動画
dj honda(DJホンダ)が1992年にバトルDJの世界大会に出場したときのもの。このまま勝ち進み、日本人初の準優勝を勝ち取った。
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=p6agslFku8c[/youtube]
ターンテーブルが、いかに耐久性を求められているのかがわかる。
関連作品
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