15分でわかるサンプリング講座
「サンプリング」というのは、ヒップホップ音楽をつくるときの作曲手法のひとつです。すでにある誰かの作品を一部抜粋して、その上にラップを乗せます。
基本的には、耳になじみのある名曲を使用するのがセオリーです。そのため、多くのアーティストが同じ作品をサンプリングしていることも少なくありません。
今回は、おなじ原曲を使用した例を紹介します。原曲をどうやって料理しているのかを聞き比べてみましょう。
同じ素材の曲を聴き比べてみよう
具体例を出すのが手っとり早いので、まずはサンプリングの素材となる「元ネタ(もとねた)」を聴いてみましょう。
「Risin' To The Top」(1982) / Keni Burke
ご存知(かどうか知りませんが)、Keni Burke(ケニー・バーク)による軽快なナンバーです。この曲は、多くのヒップホップ・アーティストが使用しています。
このような有名ネタのことを「大ネタ(おおねた)」といいます。それでは、この作品の一部を切りとって、ループさせて、ヒップホップ作品にしてみましょう。
「Born 2 Live」(1994) / O.C.
しっとりと歌い上げていた原曲から一転。タイトなO.C.のラップが乗ることで、完全にヒップホップの曲へと昇華されているのがわかります。
時代によって原曲を録音する機材も進化してきます。音はどんどん綺麗になっていく反面、原曲のアナログ感は損なわれてしまいます。
そのため、その時代にしか出すことのできない音が存在するのです。したがって、この曲は、1994年ならではの作品といえるでしょう。
それでは、1994年モノのKeni Burke(ケニーバーク)「Risin' To The Top」ネタをもうひとつ。
「I'll Take You There」(1994) / Pete Rock & C.L. Smooth
以上、1994年物の「Risin' To The Top」ネタを例に挙げて、サンプリング手法についてざっくりと解説してみました。サンプリングの一端がご理解いただれば幸いです。
今回紹介した作品収録アルバム
-
Changes (1982)
Keni Burke(ケニー・バーク)
今回の題材で元ネタとなる楽曲「Risin' To The Top」が収録された作品。Keni Burke(ケニーバーク)のサード・アルバム。
…詳細を見る -
Word...Life (1994)
O.C.(オー・シー)
「Risin' To The Top」ネタ「Born 2 Live」が収録されたO.C.のファースト・アルバム。今回紹介した「Born 2 Live」以外にも名曲多数。O.C.のラップもトップクラス。これを名盤と呼ぶ。
…詳細を見る -
The Main Ingredient (1994)
Pete Rock & C.L. Smooth(ピート・ロック&シー・エル・スムーズ)
「Risin' To The Top」ネタ「Take You There」が収録されたPete Rock & C.L. Smooth(ピート・ロック&シー・エル・スムーズ)のセカンド・アルバム。丁寧なネタ使いに定評のあるPete Rock(ピート・ロック)の技術が随所に散りばめられた名盤。
…詳細を見る
「Risin' To The Top」ネタの作品リスト
今回紹介したKeni Burke(ケニーバーク)「Risin' To The Top」。この曲は俗に「大ネタ」と呼ばれ、定番のネタ(楽曲)として知られている。
大ネタは多くのアーティストに使用されていることもあり、楽曲もたくさんある。興味があればチェックしてみよう。
- I Pioneered This (1988) / MC Shan
- Keep Risin' To The Top (1988) / Doug E Fresh
- Smooth Operator (1989) / Big Daddy Kane
- Around The Way Girl (1990) / LL Cool J
- Fat Rat (1991) / Grand Puba (from OST「Strictly Business」)
- The Basement (1992) / Pete Rock & C.L. Smooth
- How To Roll A Blunt (1992) / Redman
- Love No Limit (Remix) (1993) / Mary J Brige
- U Da Man (1993) / Black Moon
- Lately I've Been Thinking (1996) / Common (from V.A.「America Is Dying Slowly」)
- I Wanna Rock (1993) / DJ Jazzy Jeff & Fresh Prince
- Born 2 Live (1994) / O.C.
- I'll Take You There (1994) / Pete Rock & C.L. Smooth
- Straight From Da Ghetto (1996) / Lost Boyz
- You & You (1996) / Frankie Cutlass
- You Can Get It (1997) / Heavy D (& The Boys)
- Feelin' You (1998) / Ali.
- Crosstown Beef (1998) / Medina Green
- Rap Phenomenon (1999) / The Notorious B.I.G.
- Paradise (2002) / LL Cool J
- Hey Nas (2002) / Nas
- Icons (2005) / Funky DL
- Get On The Floor (2007) / Jahah
ヒップホップの基礎知識
ヒップホップ用語関連
-
ヒップホップ基礎用語のまとめ
これだけは知っておきたいヒップホップ用語の基礎。 -
5分でわかるライミング講座
韻(いん)の概念を理解すれば、さらにヒップホップが楽しく聴ける。 -
15分でわかるサンプリング講座
おなじ楽曲をつかって複数のヒップホップ音楽が生まれる。 -
HIP HOPスラング辞典
何の変哲もない単語はヒップホップではこういう意味だった。
ヒップホップを楽しむためのコツ
-
Jazzyヒップホップを楽しむための最初の1枚
ジャズネタを使用したヒップホップ作品をジャジー・ヒップホップと呼ぶ。なんとなく敷居が高そうに思うかもしれないが、リスナーは好きな曲を聴いていればいい。
ノリノリのハードコアヒップホップに対して、癒し効果さえありそうなジャジー・ヒップホップを聴きたい気分の時もあるだろう。
まずは1枚。ジャジー・ヒップホップにさわってみよう。 -
1990年代HipHopを代表するプロデューサー8人
ヒップホップの楽曲はプロデューサーによって意外と色分けされている。使うネタの傾向や、ビートの刻み方など、自分好みのプロデューサーを探してみよう。今回はとくに有名な8名のプロデューサーとともに、提供した楽曲の収録アルバムをまとめてみた。 -
サンプリングについての考察
ヒップホップの作曲にはサンプリングという手法が使われていた。原曲のオイシイ部分を切り貼りするこのサンプリング手法は、楽曲の権利問題を生んだ。有名な原曲をそのまま使用して金儲けをたくらむことも可能である。このため、時代とともにサンプリングの規制は強まっていった。 -
ヒップホップ・クラシックについての考察
何年たっても色あせず、今でも世界中で聴かれているクラシック音楽。このように何年たっても色あせないヒップホップ作品を、ヒップホップ・クラシックと呼ぶ。このヒップホップ・クラシックを数枚紹介。ここからヒップホップ作品のラインナップを広げてほしい。