1996年リリースされた Japanese Hip Hopの名盤15作品まとめ

1996年に発売されたJapanese Hip Hopのまとめ。日本語ラップ名盤特集ページ。

1996年リリースされたJapanese Hip Hopの名盤15作品

1996年というと、7月7日に行なわれたジャパニーズ・ヒップホップの祭典「さんピンCamp」が行なわれた年。

Buddha Brand(ブッダ・ブランド)が本格的にシーンに登場した年でもある。もともと、彼らの帰国を追ったドキュメンタリー映画が「さんピンCamp」のコンセプトであった。

ちいさなクラブでのライブ活動をつみ重ねてきたことが、これだけ大きなイベントを成功させた要因となり、それが今後のシーン拡大を予感させた。

「さんピンCamp」でパフォーマンスしていた作品が多いのも特徴だろう。

目次

  1. 1995年を象徴する名盤3枚(ミニアルバム)
  2. 1996年を象徴する名盤3枚(フルアルバム)
  3. Little Bird Nation(リトル・バード・ネイション)周辺の作品
  4. さらに無視できない作品
  5. そのほか注目の作品
  6. 追記

1996年を象徴する名盤3枚(ミニアルバム)

やはりBuddha Brand(ブッダ・ブランド)の作品を無視することはできない。

また、Lamp Eye(ランプアイ)名義でリリースされた「証言」は、7人のMCによる歴史的なマイクリレー作品。 サンプリング元は「Deadly Affair」のサントラに収録の「Who Needs Forever?」。研ぎ澄まされたワンループは、ムダなぜい肉がいっさい排除されたトラックとなっている。

人間発電所 ~プロローグ~
人間発電所 ~プロローグ~
Buddha Brand(ブッダ・ブランド)
評価
これまでの日本語ラップの軌跡を覆すほどの衝撃を与えた作品。従来のサウンドとはまったく異質の空気をまとっていた。とくに、ケタ違いのインパクトを残した「人間発電所」は、いま聴いても中毒性がある。

Shakkazombie(シャカゾンビ)とのスペシャル・ユニット、大神(オオカミ)名義のシングル「大怪我」も収録。

ほかに「Ill 伝承者 (Demo Virsion / April Fool Mix)」や「魔物道」など、すべて”イル”な作品で構成されている。

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黒船
黒船
Buddha Brand(ブッダ・ブランド)
評価
1995年にNYから帰国後初となるシングル「Funky Methodist / Ill Son」を収録していたため、”黒船”と名づけたようだ。また、DJ Watarai(DJワタライ)による「人間発電所」のリミックスが収録されている。

また、「Radio Free Style Studio Live '96?」は超ドープな3人のフリースタイルを楽しむことができる。とくにNipps(ニップス)のパートがヤバイ。なんとアカペラである。

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証言
証言
Lamp Eye(ランプ・アイ)
評価
タイトル曲「証言」は、Rino(リノ)→You The Rock(ユウ・ザ・ロック)→G.K. Maryan(GKマーヤン)→Zeebra(ジブラ)→Twigy(ツイギー)→Gama(ガマ)→Dev-Large(デブ・ラージ)という怒涛のマイクリレー。

DJ Yas(DJヤス)による研ぎ澄まされたワンループはムダなぜい肉をいっさい排除。自己主張の強いMCを静かに見守る。ちなみに、サンプリングのネタ元は「Deadly Affair」のサントラに収録の「Who Needs Forever?」。

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1996年を象徴する名盤3枚(フルアルバム)

当時、フルアルバム作品のリリースは決して多くなかった。You The Rock(ユウ・ザ・ロック)の「The Soundtrack '96」は、まさに1996年を象徴する記念碑的な作品といえる。

The Soundtrack '96
The Soundtrack '96
You The Rock(ユウ・ザ・ロック)
評価
客演アーティストの多さをみれば、いかに彼を中心にシーンが形成されているのかがよくわかる。
すさまじい熱量が封入された作品。

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The Deep
The Deep
Soul Scream(ソウル・スクリーム)
評価
Soul Scream(ソウル・スクリーム)のデビュー・アルバム。キングギドラや、Rhymester(ライムスター)がゲスト参加している。メンバーのShiki(シキ)が脱退する前の作品。
代表曲は、「15丁目」「0番線」「Brand New」など。

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Tokyo Tribe
Tokyo Tribe
Zingi(ジンギ)
評価
現在の童子-T(ドージT)も所属していたZingi(ジンギ)の3作目。硬派な不良を連想させるスタンスが印象的なグループ。
マイクリレーものの「Rhyme 遊戯」には、KTCC(キック・ザ・カン・クルー)のリーダーとして知られているLittle(リトル)の若かりし頃のラップを聴くことができる。

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Little Bird Nation(リトル・バード・ネイション)周辺の作品

Tokyo No.1 Soul Set(トウキョウ・ナンバー1・ソウル・セット)はアルバム「Jr.」をリリース。Three One Length(スリー・ワン・レングス)はミニアルバム「Three One Length」をこの年にリリースしている。

SDP(スチャダラパー)は、かなりコンスタントな活動を続けている。LBクルー個々の活動が活発化していたのがこの年だろう。

偶然のアルバム
偶然のアルバム
スチャダラパー
評価
これまでの作品と比べ、すこし地味な印象は否めない。従来のスタンスから決別し、新たなスタイルを模索している姿がうかがえる。
次回作で空にはばたくための”さなぎ”のような作品。

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オ・ワ・ラ・ナ・イ (Oh, What A Night!)
オ・ワ・ラ・ナ・イ (Oh, What A Night!)
キミドリ
評価
キミドリにしか出すことのできない独自のテイストは、一度聴けば否が応にも耳に残ってしまう。
Kuro-Ovi(クロオビ)のラップはインパクト絶大。一言で言ってしまえば「異質」な作品。

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手のひらを太陽に
手のひらを太陽に
Shakkazombie(シャカゾンビ)
評価
Buddha Brand(ブッダ・ブランド)とのスペシャル・ユニット、大神(オオカミ)唯一のシングル「大怪我」のリミックス(輸血Mix)が収録されている。
タイトル曲「手のひらを太陽に」は、もっとも彼らのスタイルが反映している曲といえるだろう。

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さらに無視できない作品

1996年のシーンを知るうえで、知っておきたいのが以下の3作品。

決して大衆ウケするサウンドではないかもしれないが、サンプリングによって生まれた1996年産のサウンドはここにしかない。

商業的な「ビジネス臭」が感じられず、作りたいものをつくっているのがわかる。だからこそコアなファンから圧倒的な支持を集めるに至ったのだろう。

聖戦
聖戦
Twigy(ツイギー)
評価
Beatkicks(ビートキックス)、そしてMicrophone Pager(マイクロフォン・ペイジャー)と、1996年にしてすでにキャリアのあるTwigy(ツイギー)のソロ作品。
ペイジャーの頃から、ラップの上手さは飛びぬけていた。個人的には、このころのフロウがいちばんカッコイイと思ってしまう。

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On The 1+2
On The 1+2
Maki & Taiki(マキ・アンド・タイキ)
評価
プロデューサー・ユニットのミニアルバム作品。Muro(ムロ)、Twigy(ツイギー)、Gama(ガマ)、そしてMummy-D(マミーD)とZeebra(ジブラ)という豪華MC陣を客演に招いている。
すでに廃盤となっているが、ここでしか聴くことができない楽曲ばかりなので、見かけたらチェックしてみてほしい。

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影

King Giddra(キングギドラ)
評価
「行方不明」「真実の弾丸」「空からの力」のリミックスを含むミニアルバム。
「重要参考人が見た犯行現場」は、T.A.K. The Rhymehead(TAKザ・ライムヘッド)のフリースタイル。「地獄絵図」は、実質DJ Oasis(DJオアシス)の初ソロ作。

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そのほか注目の作品

さらにキーとなる3枚を紹介。

蜃気楼
蜃気楼
Dohzi-T & DJ Bass(ドージ・ティー&DJベース)
評価
Zingi(ジンギ)のメンバー2名で構成されたユニットの8曲入りアルバム。
FGクルーを中心に、多くのMCが参加した「Word Cup '96」では、早くもKreva(クレバ)とMCUが共演している。また「Zの紋章」にはLittle(リトル)がイントロに参加している。
収録曲のなかでは、Zeebra(ジブラ)とMummy-D(マミーD)が参加した「流儀」が有名。

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The Words
The Words
T.A.K The Rhymehead(ティー・エー・ケー・ザ・ライムヘッド)
評価
キングギドラのシングル「大掃除」の客演で本格的にシーンに登場。ラップを聴けば、カッコイイ言葉を厳選しているのがよくわかる。
かなりダークなトラックにマッチしたド渋な作品。代表曲は「銀河探検鬼」。

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続・悪名
続・悪名
Various Artists
評価
オムニバス作品「悪名」の続編。参加アーティストは前作とほぼ同じ。サウンドのテイストも前作を踏襲しているものの、さらに洗練されている印象がある。
今回からT.A.K The Rhymehead(TAKザ・ライムヘッド)、G.K.Maryan(GKマーヤン)とUzi(ウジ)が登場した。

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追記

今回紹介した15枚は、CDで手に入る音源に限定している。昔の音源なので、手に入りにくいものも含まれている。その点はご了承いただきたい。興味のリスナーにとっては垂涎の1枚も含まれていることだろう。

ジャパニーズ・ヒップホップの歴史をたどっていけば、いずれたどり着く名盤ばかり。中古CDショップや、レンタルなどで見かけたらチェックしてみてほしい。

「さんピンCamp」がひとつのターニング・ポイントなのは間違いない。実際に「さんピン以後」という表現をつかう人もいる。

このような時代の過渡期があるからこそシーンが成熟するのである。

1995年までの歴史の集大成的イベント「さんピンCamp」

「さんピンCamp」は1996年の七夕に行なわれた伝説的イベントである。

アンダーグラウンドで地道に活動してきた日本のヒップホップ・アーティストたちが、日比谷野外音楽堂の舞台でついに陽の目をみる。

あいにくの雨ではあったが、日本のヒップホップ・シーンを支えてきた25組以上のアーティストたちによるアツいライブを観れば、少なからず当時の熱気を体感できるはずだ。

さんピンCamp (Legend Of Japanese Hip Hop) - ECD Presents
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Various Artists
評価
Buddha Brand(ブッダ・ブランド)が活動拠点をアメリカから日本に移すということで、ECDがその過程をドキュメンタリー映画にしようとしたのがはじまり。

映画の前半部分は、実際にドキュメンタリー映画のような構成となっている。後半部分は、日比谷でのイベント風景に大きく時間を割いている。

若かりしライムスターやキングギドラのライブが観れるほか、雷の「証言」や、大神(シャカ+ブッダ)の「大怪我」まで収録されている。

当時の参考資料としても貴重な映像作品である。

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