吟遊詩人 小林大吾(コバヤシ・ダイゴ)特集

創造性と語彙力を兼ね備えたヒップホップ以降の吟遊詩人、小林大吾(コバヤシ・ダイゴ)の特集ページ。

吟遊詩人 小林大吾(コバヤシ・ダイゴ)特集

挿絵
ジャパニーズ・ヒップホップの範疇からは少なからず逸脱している部分もある。しかし、この創造性と語彙力を兼ね備えたヒップホップ以降の吟遊詩人「小林大吾(コバヤシ・ダイゴ)」を無視することはできない。

難解な1作目「1 / 8,000,000」

これまでに3枚のアルバムをリリースしている彼。語彙力をあますことなく表現されたファースト・アルバム「1 / 8,000,000(やおよろず) (2005)」は、リスナーに向けるにはあまりにも難解な作品であった。

むずかしい言葉が並んでいて、一聴しただけでは意味を理解できない。その難解さたるや、自分自身が満足するためだけにつくった作品なのではないかとさえ感じてしまうほどである。

緊張感ただよう無機質なサウンドは、万人に受けるとは到底思えないサウンドである。しかしその一方で、コアなリスナーからは支持されているようだ。

1 / 8,000,000 (2005)
1 / 8,000,000 (2005)
小林大吾(コバヤシ・ダイゴ)
評価
語彙力をあますことなく表現された作品。難解ではあるが、コアなリスナーからは支持されている。

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飛躍的に洗練された2作目「詩人の刻印」

その2年後にリリースされたのが、セカンド・アルバム「詩人の刻印 (2007)」。前作からは想像もつかないほどのポップなサウンドと、比較的わかりやすい言葉を選んでいる。

リスナーにも理解を求めている姿勢がうかがえ、前作と比べて飛躍的に洗練された作品となった。シリアスな声でメッセージを吐き出していた前作から一転。ほぼ全曲で、驚くほどやさしい声で語る小林大吾を堪能することができる。

とくに「アンジェリカ」や「女と紙屑」を聴けば、大量のマイナスイオンを耳に浴びることになる。ソウルフルで温かみのあるサウンドも、大幅にリスナーの幅を広げたはずだ。

一気に垢抜けたこの2作目を、ベスト・ワークにあげるファンは多い。認知度こそ低いが、プロモーションしだいでは、かなり多くのファンを獲得できるだろう。

詩人の刻印 (2007)
詩人の刻印 (2007)
小林大吾(コバヤシ・ダイゴ)
評価
語彙力をあますことなく表現された作品。難解ではあるが、コアなリスナーからは支持されている。

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まるで短編小説のような3作目「オーディオビジュアル」

そして、とうとう発売された最新作。今年5月に発表したサード・アルバム「オーディオビジュアル (2010)」である。この作品がとにかくすばらしい。

最高傑作だと思っていたセカンドから、さらにギアをひとつ上げている。吐き出す”語り”からは、余裕すら感じられる。中毒性があり、何度も聴き返してしまう。iPodの再生回数の上位は、ほとんどこのアルバムの収録曲である。

洗練された言葉たち。まったくと言って良いほどムダがない。1曲ごとに読める短編小説のようなこの作品に、「とうとう1ジャンルを確立した」という確信めいたものを感じた。

1曲ごとに哲学的なメッセージが含まれているような気がしてならない。そこで、サード・アルバム「オーディオビジュアル」の全曲解説を、個人的な見解で紐解いてみようと思う。

このため、作者の意図と相違点があるのは明白であるが、純粋な”いちリスナー”としての見解を記しておく。これから小林大吾の世界を知る人の助けになれば幸いである。

※500枚限定で先行リリースされた【特装版】付録の「オーディオビジュアル取扱説明書」に記載された曲解説は未読。

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全曲解説:「オーディオビジュアル」小林大吾
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小林大吾(コバヤシ・ダイゴ)のサード・アルバム「オーディオビジュアル」のヒップホップ・フレーバーによる全曲解説。
自らを吟遊詩人と名乗るだけあって、表現力が素晴らしい。圧倒的な語彙力、そして緻密な設定に裏付けられた楽曲のひとつひとつが推敲を重ねに重ねた作品となっている。

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作品解説

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アーティスト解説

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ジャパニーズ・ヒップホップが独自進化したひとつのかたち。ポエトリーRAPとも少し違う。圧倒的な語彙で繰り広げられる小林大吾ワールドは、他では味わうことができない。

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