1990年前後に運営していたヒップホップ・レーベル

1990年代に運営していたヒップホップ・レーベルのまとめ。

1990年前後に運営していたヒップホップ・レーベル

ヒップホップ音楽が急速に発展したのは1980年代から1990年代にかけてのこと。このころは様々なヒップホップレーベルが台頭していた。

おなじヒップホップ作品であってもレーベルごとに作品の毛色は異なる。アーティストを選ぶときは所属しているレーベルを調べるだけで新たな発見があるだろう。

そこで今回は、1990年前後に運営していた主要ヒップホップ・レーベルを紹介しよう。

レーベル一覧(アルファベット順)

  1. Bad Boy(バッド・ボーイ)
  2. B-Boy(Bボーイ)
  3. Cold Chillin'(コールド・チリン)
  4. Def Jam(デフ・ジャム)
  5. Delicious Vinyl(デリシャス・ヴァイナル)
  6. Death Row(デス・ロウ)
  7. Fresh(フレッシュ)
  8. Jive(ジャイヴ)
  9. Loud(ラウド)
  10. Luke Skyywalker(ルーク・スカイウォーカー)
  11. Next Plateau(ネクスト・プラトウ)
  12. Priority(プライオリティ)
  13. Profile(プロファイル)
  14. Rawkus(ロウカス)
  15. Relativity(リラティヴィティ)
  16. Rowdy(ロウディ)
  17. Ruthless(ルースレス)
  18. Sugar Hill(シュガー・ヒル)
  19. Tommy Boy(トミー・ボーイ)
  20. Tuff City(タフ・シティ)
  21. Wild Pitch(ワイルド・ピッチ)
  22. reck(レック)

Bad Boy(バッド・ボーイ)

Bad Boy(バッド・ボーイ)
Uptown(アップタウン)から独立したSean Puffy Combs(ショーン・パフィ・コムズ)が設立。

The Notorious B.I.G.(ザ・ノトーリアスBIG)やCraig Mack(クレイグ・マック)などが所属。彼らの商業的な成功は、ヒップホップのありかたを少なからず変えた。

代表作

B-Boy(Bボーイ)

B-Boy(Bボーイ)
ハードコアな作品が多いレーベル。Boogie Down Productions(ブギー・ダウン・プロダクションズ)の初期作品などは、ここからリリースされた。

JVC Force(JVCフォース)、Busy B(ビジーB)、Cold Crush Brothers(コールド・クラッシュ・ブラザーズ)などが所属。

もともとは、ポルノ映画の製作もやっていたらしい。

代表作

Cold Chillin'(コールド・チリン)

Cold Chillin'(コールド・チリン)
マネジメントを手がけるTyrone Williams(タイロン・ウィリアムズ)とプロデューサーのMarley Marl(マーリー・マール)によるレーベル。

Marley Marl(マーリー・マール)の手がけたアーティストたちを総称してJuice Crew(ジュース・クルー)と呼ぶ。とくに1988年~1989年の作品はすべて良盤となっている。

なお、所属アーティストであるBiz Markie(ビズ・マーキー)やBig Daddy Kane(ビッグ・ダディ・ケイン)の初期作品は、Cold Chillin'(コールド・チリン)の前身的なレーベル、Prism(プリズム)からリリースされている。

代表作

Def Jam(デフ・ジャム)

Def Jam(デフ・ジャム)
Kurtis Blow(カーティス・ブロウ)やRun-DMC(ランDMC)のマネージャーをやっていたRussell Simmons(ラッセル・シモンズ)とヘヴィ・メタル好きの白人青年Rick Rubin(リック・ルービン)が1985年に設立(リックは途中で独立)。

LL Cool J(LLクールJ)やBeastie Boys(ビースティ・ボーイズ)、Public Enemy(パブリック・エネミー)などのアーティストを次々と輩出。ヒップホップの象徴的なレーベルといえる。

近年では、Def Jam(デフ・ジャム)内で中小規模のレーベルが派生している。Jay-Z(ジェイZ)のRoc-A-Fella(ロッカ・フェラ)や、Ruff Ryders(ラフ・ライダーズ)などが有名。

代表作

Delicious Vinyl(デリシャス・ヴァイナル)

Delicious Vinyl(デリシャス・ヴァイナル)
1987年にマット・ダイクとマイケル・ロスによってLAで立ち上げられたインディ・レーベル。非ギャングスタ・ラップのスタンスで独自の西海岸テイストを提唱した。

西海岸のポップMCとして知られたTone Loc(トーン・ロック)の作品がヒットし、一躍有名となる。

さらに、The Pharcyde(ファーサイド)のデビュー作が成功をおさめ、新たなファンを獲得。西海岸有数のレーベルとなった。

代表作

Death Row(デス・ロウ)

Death Row(デス・ロウ)
Easy-E(イージーE)と決裂したDr. Dre(ドクター・ドレ)が、Suge Night(シュグ・ナイト)とともに設立。

Dr. Dre(ドクター・ドレ)とSnoop Doggy Dogg(スヌープ・ドギー・ドッグ)の作品が大ヒット。Gファンク旋風を巻き起こし、西海岸を代表するレーベルとなった。

後に2Pac(2パック)らを中心に、東西戦争が勃発。以後「キナ臭い武闘派レーベル」という印象に。

代表作

Fresh(フレッシュ)

Fresh(フレッシュ)
EPMD(イー・ピー・エム・ディー)やNice & Smooth(ナイスン・スムース)が所属していたレーベル。

1989年ごろに倒産。主要な所属アーティストはDef Jam(デフ・ジャム)へと移籍した。

ほかにも、T La Rock(Tラ・ロック)やJust-Ice(ジャスト・アイス)なども名盤をリリースしている。

代表作

Jive(ジャイヴ)

Jive(ジャイヴ)
1981年にイギリスで設立。その後1984年には拠点をアメリカに移す。Whodini(フーディニ)らのヒットによってその基盤を築いた。

A Tribe Called Quest(トライブ・コールド・クエスト)や、Boogie Down Productions(ブギーダウウン・プロダクションズ)の作品をリリース。

代表作

Loud(ラウド)

Loud(ラウド)
DJのStretch Arm Strong(ストレッチ・アームストロング)をA&Rに招き、アンダーグラウンドにも目を向けたレーベル。SRC Records(SRCレコード)傘下。

Wu-Tang Clan(ウータン・クラン)や、Mobb Deep(モブ・ディープ)、The Beatnuts(ビートナッツ)などが所属。

2002年にレーベルは閉鎖された。

代表作

Luke Skyywalker(ルーク・スカイウォーカー)

Luke Skyywalker(ルーク・スカイウォーカー)
2 Live Crew(2ライブ・クルー)を率いていたLuther Campbell(ルーサー・キャンプベル)が1990年に設立。

過去に元Public Enemy(パブリック・エネミー)のProfessor Griff(プロフェッサー・グリフ)がアルバムをリリースしたこともある。

CD音源はほとんど存在しないようだ。

Next Plateau(ネクスト・プラトウ)

Next Plateau(ネクスト・プラトウ)
Salt-N-Pepa(ソルト・ン・ペパ)など、Herbie Love Bug(ハービー・ラヴ・バグ)の手によるポップな作品を得意とするレーベル。

Ultramagnetic MC's(ウルトラマグネティック・エムシーズ)のデビュー・アルバムもここからリリースされた。

代表作

Priority(プライオリティ)

Priority(プライオリティ)
1985年に設立。Ice Cube(アイス・キューブ)やその周辺アーティストの諸作をリリースしている。

代表作

Profile(プロファイル)

Profile(プロファイル)
1981年に設立された古株レーベル。看板アーティストはなんといってもRun-DMC(ランDMC)。

かつてUptown(アップタウン)の社長Andre Harrell(アンドレ・ハレル)のグループであった、Dr.Jekyll And Mr.Hyde(ドクター・ジキル&ミスター・ハイド)の「Genius Rap」もヒットした。

新人発掘にも精力的で、西海岸やヒューストンのアーティストと積極的に契約を交わしてきた。しかし経営困難となった1997年、Arista Records(アリスタ・レコード)にレーベルを売却している。

代表作

Rawkus(ロウカス)

Rawkus(ロウカス)
Brian Brater(ブライアン・ブレイター)とJarret Myer(ジャレット・メイヤー)により1996年に設立。

地下で活動している有能なリリシストを発掘した「Lyricist Lounge」はコアなヒップホップ・リスナーの話題となった。

代表作

Relativity(リラティヴィティ)

Relativity(リラティヴィティ)
もともとはロック系の作品を手がけていたレーベルであったが、1992年のChi-Ali(チ・アリ)のアルバムからヒップホップ路線へとシフトチェンジ。

以後、The Beatnuts(ビートナッツ)やCommon(コモン)などの優れた作品を提供。

代表作

Rowdy(ロウディ)

Rowdy(ロウディ)
TLC(ティー・エル・シー)の大ヒット曲「Creep」などのプロデュースで知られるDallas Austin(ダラス・オースティン)が運営するアトランタのレーベル。

Ruthless(ルースレス)

Ruthless(ルースレス)
Easy-E(イージーE)が1987年に設立したレーベル。N.W.A.関係や、彼が手がけた新人たちの作品などをリリースしていた。

西海岸のレーベルだけあって、LA周辺のアーティストが多く所属している。

看板アーティストは、Bone Thugs-N-Harmony(ボーン・サグスン・ハーモニー)。

Sugar Hill(シュガー・ヒル)

Sugar Hill(シュガー・ヒル)
「ピロウ・トーク」あんどの名曲で知られるドスケベ系女性R&Bシンガー(シルヴィア・ロビンソン)が1979年ごろに設立。

Sugar Hill Gang(シュガーヒル・ギャング)「Rapper's Delight」、Grandmaster Flash And Furious Five(グランドマスター・フラッシュ&フューリアス・ファイブ)「The Message」、Spoonie Gee(スプーニー・ジー)「Spoonie's Back」など、オールドスクールの名曲を多数リリースした。

Bobby Robinson(ボビー・ロビンソン)が設立したEnjoy Records(エンジョイ・レコード)とともに、オールド・スクール期の柱となるレーベルだ。

Tommy Boy(トミー・ボーイ)

Tommy Boy(トミー・ボーイ)
Tom Silverman(トム・シルバーマン)が設立した老舗レーベル。

Afrika Bambaataa(アフリカ・バンバータ)「Planet Rock」でエレクトロ・ラップというジャンルを打ち出し、注目を浴びた。

その後ニュー・スクールが台頭すると、De La Soul(デ・ラ・ソウル)やQueen Latifah(クイーンラ・ティファ)、Naughty By Nature(ノーティ・バイ・ネイチャー)などを排出。

代表作

Tuff City(タフ・シティ)

Tuff City(タフ・シティ)
Wild Pitch(ワイルド・ピッチ)などと並ぶNYインディ・レーベルの雄として知られている。

1988年にリリースされたThe 45 King(ザ・45キング)「Master Of The Game」など、名盤はいくつか存在する。

ブレイク・ビーツのレコードにも力を入れていた。

代表作

Wild Pitch(ワイルド・ピッチ)

Wild Pitch(ワイルド・ピッチ)
Stuart Fine(スチュアート・ファイン)が1985年に設立。古くはGang Starr(ギャング・スター)やMain Source(メイン・ソース)、Chill Rob G(チル・ロブG)らが所属していた。

1990年代初頭(1989年~1996年)の作品が多い。多くの名盤を残したが、有能なアーティストをうまくプロモーションできず、経営破たん。レーベルは閉鎖となる。

流通が停止するやいなや、中古市場でレコードの価格が高騰。2008年にほとんどの作品が再販され、多少緩和された。

代表作

Wreck(レック)

Wreck(レック)
ハウス・ミュージックの作品をリリースしていたNervous Records(ナーヴァス・レコード)が、ヒップホップ用につくったレーベル。

Black Moon(ブラック・ムーン)を中心に、Boot Camp Clik(ブート・キャンプ・クリック)周辺のアーティストが多く所属している。

レゲエ用のレーベルとして、Weeded Records(ウィーデッド・レコード)というのも存在している。

代表作

まとめ

以上、22レーベルを紹介した。現在ではもう倒産してしまったレーベルも多数あり、そこからリリースされた多くの名盤が廃盤となっているのが悲しい現実である。

いちど埋もれてしまうと探すのは困難だ。しかし、突然再販されることもあるので、なかばアンティーク化した名盤を探すのも一興かもしれない。

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作品解説

全曲解説:「病める無限のブッダの世界」Buddha Brand(ブッダ・ブランド)
全曲解説:「病める無限のブッダの世界」Buddha Brand(ブッダ・ブランド)
Buddha Brand(ブッダ・ブランド)が2000年にリリースした2枚組フルアルバム「病める無限のブッダの世界」。これをパフォーマー兼プロデューサーのDev Large(デヴ・ラージ)が全曲解説。
ひとつひとつの楽曲に思い入れがあるのがわかる。
全曲解説:「The Album」Dev Large(デブ・ラージ)
全曲解説:「The Album」D.L(ディー・エル)
Dev Large(デヴ・ラージ)ことD.L(ディー・エル)本人によるソロアルバム「The Album」の全曲解説。
ほとんどの曲は何年も前から存在し、機が熟すのを待っていたという。日本トップクラスのサンプリング・センスをもったD.L(ディー・エル)珠玉のアルバムに隠れたエピソードに迫る。
全曲解説:「オーディオビジュアル」小林大吾
全曲解説:「オーディオビジュアル」小林大吾
小林大吾(コバヤシ・ダイゴ)のサード・アルバム「オーディオビジュアル」のヒップホップ・フレーバーによる全曲解説。
自らを吟遊詩人と名乗るだけあって、表現力が素晴らしい。圧倒的な語彙力、そして緻密な設定に裏付けられた楽曲のひとつひとつが推敲を重ねに重ねた作品となっている。

アーティスト解説

吟遊詩人 小林大吾(コバヤシ・ダイゴ)特集
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